化学科についての説明は目次の③からになります。大阪大や大阪大学理学部の解説を飛ばしたい方は③から読んでください。
大阪大学について
まずは大阪大学について
(大学HPより)
大学の雑感や公式サイト
HPを見ると「オモロイ阪大」というキーワードが掲げられていて阪大では「オモロイ」研究をしていくぞというメッセージが込められています。
これは完全に個人的な偏見なのですが、大阪大学はどちらかというと「堅い理系の大学」というイメージがあります。
生徒にはマジメで優秀な、いわゆる優等生が多い印象です。
ここで言われているような「オモロイ」学生が多いのは京大のイメージです。
こういったイメージが単なる偏見で間違いなのか、こういったイメージを払拭するためにあえて「オモロイ阪大」というキャッチコピーをつけているのか。
どちらにせよ、「オモロイ阪大」をアピールするために、研究内容の紹介にはかなり力を入れてHPを造っています。
「大阪大学の教員によるミニ講義」というタイトルで高校生向けに研究内容を紹介するページがあります。
もうちょっと踏み込んだ、最新の研究結果を発表しているページもあります。
他には大阪大学のPVも用意されていました。
次に大阪大学の特徴です。
- 緒方洪庵が1838年に設立した適塾がルーツ。「人のため、世のため、道のため」という思いが受け継がれている。
- 医学部・理学部ついで工学部が加わり理科系帝国大学としてスタート
- 理学部・工学部の他に基礎工学部がある。農学部はない。
- すべての学部で【総合型選抜】か【学校推薦型選抜】の入試を実施
- キャンパスは3つ。どれも駅から少し歩く場所。
それぞれの項目を簡単に解説します。
学問において、歴史と伝統というのは非常に大切です。
ニュートンが「巨人の肩のに乗っている」と言ったように、学問そのもの自体が歴史の積み重ねによるものですから。
大阪大学は有名な「適塾」をルーツに持ちます。
「適塾」は塾生が猛勉強したことで有名です。
福沢諭吉が勉強していて気づいたら寝ているという生活を続けていて、最後に横になって寝たのがいつだか思い出せなかったという有名なエピソードがあります。
後に卒業生は適塾時代を振り返り、「目的なしの勉強」を提唱している。塾生は立身出世を求めたり勉強しながら始終わが身の行く末を案じるのではなく、純粋に学問修行に努め、物事のすべてに通じる理解力と判断力をもつことを養ったのである。
(wikipediaより)
これは研究に通じるものがあります。
昨今は実用につながる研究にしか予算がつかないようですが、本来研究は己の好奇心がスタート地点で純粋な知的欲求によって進められるものです。
「目的なしの勉強」をしていた福沢諭吉が紙幣に採用されるほどの大人物になったように、純粋な知的欲求からの研究がまた世のためになるものです。
現在の大阪大学にももしかしたら、とにかく知的欲求に応じて寝食忘れるほどひたすらに研究に打ち込む雰囲気が残っているかもしれませんね。
適塾がその後に大阪医科大学となりそれを前身に、医学部と理学部で大阪帝国大学がスタートし、すぐ後に工学部が加わりました。
大阪大学といえば、理系のイメージが強いですが、このような歴史からくるものですね。
【総合型選抜】
文学部、人間科学部、外国語学部、法学部、経済学部、理学部
【学校推薦型選抜】
医学部医学科、医学部保健学科、歯学部、薬学部、工学部、基礎工学部
どれも駅から少々歩く。
各部によって使用キャンパスが異なります。
石橋阪大前駅下車 徒歩約20分
◯大阪モノレール
柴原阪大前駅下車 徒歩約12分
全学教育(1年生は全員)は豊中キャンパスで一般教養を受講してその後各学部の所属キャンパスに移ります。
2年生以降も豊中キャンパスを使用する学部は
- 文学部
- 法学部
- 経済学部
- 理学部
- 基礎工学部
北千里駅(終点)下車 徒歩約20分
◯大阪モノレール
阪大病院前駅下車 徒歩約10分
◯近鉄バス
・阪急茨木市駅発「阪大本部前行」(JR茨木駅経由)阪大医学部前または阪大本部前下車 徒歩約10分
全学教育(1年生は全員)は豊中キャンパスで一般教養を受講してその後各学部の所属キャンパスに移ります。
2年生以降に吹田キャンパスを使用する学部は
- 医学部
- 歯学部
- 薬学部
- 工学部
- 人間科学部
箕面キャンパスは旧大阪外国語大学で、外国語学部のみです。
大阪大学の学部構成(各リンク)
大阪大学 学問コンシェルジュ
受験生のみなさんが持つ興味・関心や将来やりたいことと、それをかなえる学問や研究が大阪大学のどこの研究室でできるのか、そのためにはどの学部に進めばよいかをマッチングする診断システムです。
阪大のホームページに、キーワードを選択していくと自分の興味がどの学部学科と関係性があるのかを診断してくれるコーナーがあります。
大阪大学理学部について
次は理学部について見ていきましょう。
大阪大学理学部の特徴
- 設立当初より設置されている学部
- 初代総長は長岡半太郎という歴史を持つ
『勿嘗糟粕(そうはくをなむるなかれ)』 - 理学部は数学・物理学・化学・生物学の4学科
- 毎年「サイエンスナイト」という一般向け講座を開催
- HPのQ&Aがめちゃくちゃ面白い
学科の歴史と伝統の重要性は別の記事で書いています。是非参考にしてください。
【偏差値より大切!?】大学選びで重要視すべき4つのポイント
Schrödinger正直、大学って偏差値以外何をみて選んだら良いかわかんないよね 室長いちばん大切なのはそこの大学に入って何が学べるか、だね Schrödingerも[…]
という意味になるでしょう。
この姿勢が脈々と繋がっているのです。
理学部Q&A
阪大理学部のHPのメインはこれです(笑)めちゃくちゃ面白いですね。
1冊本が作れそうなほどの科学に対する問答と、高校生人生相談が行われています。
理学部を進路に考えている人は是非見てほしいです。いくつか質問の例をあげておきます。
- Q&Aの質問抜粋
- 数学というのは既に研究され尽くした学問だと思うのですが。
- πおよびeを10進展開したとき2つの各数で、奇数と偶数は同じ確率(50%)で現れますか?
- 過去に戻ってもまた同じ人生になりますか?
- あらゆるものもの表面が電子で覆われている状態では、ものにふれることができないのでは?
- 理学部独特のおもしろさっていうのはどういったものですか?
- 運動エネルギーも万有引力のエネルギーも飛び飛びのエネルギーですか?
- 理学部に行く目的ってなんですか?
- 炎とは?
- 進化とはどのような事を言うのでしょうか?
学科構成(リンク)
- 数学科(57)
- 物理学科(76)
- 化学科(77)
- 生物学科
生物科学コース(30)
生命理学コース(25)
()は募集人数です。
他大学との比較
他大学の理学部と募集人数を比較してみましょう。同じ偏差値群Aと比較してみます。
偏差値群って何?という人はこちらの記事を参照してください。
【大学の偏差値群】
偏差値群から考える 細かな偏差値の差にこだわるのは無意味です。が、あまりに自分の偏差値とかけ離れた大学に進学することもオススメできません。 これは「大学の選び方」の記事で書いた通りです。まだ読んでない方はそちらから読んでみ[…]
【偏差値Aの理学部】
大阪大学 理学部 | 5学科 | 225人 |
北海道大学 理学部 | 5学科 | 300人 |
東北大学 理学部 | 7学科 | 324人 |
名古屋大学 理学部 | 5学科 | 220人 |
九州大学 理学部 | 5学科 | 258人 |
東京工業大学 理学院 | 4学科 | 143人 |
理学部で学科・募集人員ともに多いのは東北大学ですね。
大阪大学は理学部と工学部の中間的存在の基礎工学部が435人の募集人数をもっていますから、単純に理学部だけで比較はできません。
大阪大学の理学部を考えている人は、合わせて基礎工学部の方も調べてみましょう。
(参考)東京工業大学も理学と工学の中間的存在の「理工学院」を設置しています。そのため理学部の人数だけではかれない部分もあります。
受験生むけ1日体験入学
受験生向けのページに1日体験入学というイベントが開催されています。
模擬授業や実験をするようです。
大阪大学理学部の入試について
大学の特徴でも触れましたが、大阪大学では全ての学部で、一般入試以外の総合型選抜、学校推薦型選抜のどちらかを実施しています。
今年度から
「AO入試」 → 「総合型選抜」
「推薦入試」 → 「学校推薦型選抜」
に名称が変更されます。
理学部では、「総合型選抜」が実施されます。
募集定員の約10%強が「総合型選抜」で募集される。
数学、物理学、化学、生物学、地学など科学分野の学問・研究に強い興味を持つ者で、化学科の場合、次の①~⑥までのいずれかに1つ以上該当する者、生物科学科の場合、次の①~⑦までのいずれかに1つ以上 該当する者。
とありますので、化学科・生物学科以外は「科学分野の学問・研究に強い興味を持つ者」ならば良いということでしょう。
化学科・生物学科の出願資格
- スーパーサイエンスハイスクール(SSH)生徒研究発表会(文部科学省等主催)で、出場者となった者
- 日本学生科学賞(読売新聞社等主催)で、入選した者及び最終審査会進出者となった者(予定の者を含む)
- ジャパン・サイエンス&エンジニアリング・チャレンジ(JSEC)高校生科学技術チャレンジ(朝日新聞 社主催)で、最終審査会出場者となった者(予定の者を含む)
- 日本学術会議協力学術研究団体主催の学会(*)での発表者(予定の者を含む)
(*)志望する学科で指定されている学会名等は次の通りである。
化学科:日本化学会(支部の会合を含む)
生物科学科:学会名は指定しない。 - グローバルサイエンスキャンパス(GSC)全国受講生研究発表会で、出場者となった者(予定の者を含む)
- 大阪大学SEEDSプログラム実感コースを受講し、修了した者
- 数学、物理学、化学、生物学、地学など科学分野の優れた自由研究又は課題研究を行った者
書類審査
二次選抜
口頭試問100点+センター試験100点換算
第1次選考合格者に対し口頭試問(研究成果のプレゼンテーションを含む)を実施します。口頭試問は個 人ごとに行い、1人30分~1時間程度(目安としては、10分間プレゼンテーション、その後に質疑応答)
- 研究成果のプレゼンテーションはA0(ゼロ)判1枚のポスターを準備し、口頭試問当日に持参してく ださい。そのポスターを用いて、10分間で研究成果を発表してもらいます。
- 第2次選考には、下記のものを必ず持参してください。
①プレゼンテーション用のポスター ②大阪大学受験票
詳しくは、今年度の募集要項にて確認してください。
化学科について
- 阪大の理学部化学科でできること
- 無機化学、物理化学、有機化学、高分子科学の4分野
- 約1/3は、高校では物理ではなく生物選択
- 大学院進学率はおよそ88%程度。
- 研究内容は素粒子・原子核・原子分子・物性物理・地球惑星・宇宙
阪大の理学部化学科でできること
HPには次のような人は阪大理学部化学科の学びに合う人だとありました。
- 人類の役に立つ新しい物質や材料を開発したい人
- 高校での化学実験に興味を持った人
→ 1年生から4年生までずっと化学実験科目が用意されている - 高校の化学は暗記ばかりで、もう1つ興味が持てない人
→ 大学に入ってから学ぶ原理を使えば、化学現象の多くは理詰めで理解できる - 理科系の学部のどこにしようか迷っている人
→ 理学部出身だから、企業に就職しにくいということは一切ない。むしろ基礎学力を持った学生の入社を希望する企業もたくさんある。 - 自分の専門を、化学にしようか物理にしようか生物にしようか迷っている人
- 医薬品・化粧品・食品などに興味を持っている人
「⑤自分の専門を、化学にしようか物理にしようか生物にしようか迷っている人」に関し補足します。
化学は、一番応用範囲の広い自然科学の分野で、化学現象を理詰めで理解しようと思うと高校の物理を発展させた学問が必要になりますし、生物の理解には化学の知識が必須となります。
最先端の化学には、物理や生物とも接点をもった研究分野がたくさんあります。
阪大の理学部化学科では、このような境界領域で研究している研究室も多く設置されているので、化学にしようか物理にしようか生物にしようか迷っている人にはうってつけだということです。
また、生物科学科の中にある生命理学コースは、生物と化学の両方に興味のある人に適したコースで、化学科に近いカリキュラムで学習でき、化学科の研究室に配属して4年生の卒業研究も行えます。
これはなかなかおもしろいですね。別の学科の研究室に配属できるわけですから。生物・化学で迷っている人はそちらも見てみましょう。
さらに、阪大には、理学部・基礎工学部・工学部と3つも科学に関して学べる学科があります。しっかり調べてある程度違いを明確にして、学部を選んでくださいね。
他の学科に関しても、解説しています。
【大学調べ】大阪大学 工学部 応用自然科学科を解説 応用自然科学科についての説明は目次の③からになります。大阪大や大阪大学工学部の解説を飛ばしたい方は③から読んでください。大阪大学についてまずは大阪大学について(大学HPより)大学の雑感や公式サイト公式HPはこ[…]
(応用自然科学科の中に化学コースがあります)
【大学調べ】大阪大学 基礎工学部 化学応用科学科を解説
化学応用科学科についての説明は目次の③からになります。大阪大や大阪大基礎工学部の解説を飛ばしたい方は③から読んでください。大阪大学についてまずは大阪大学について(大学HPより)大学の雑感や公式サイト公式HPは[…]
無機化学、物理化学、有機化学、高分子科学の4分野
阪大の化学科で学べる分野は大きく4つに分かれます。
無機化学、物理化学、有機化学、高分子科学です。それぞれ解説します。
- 分子や微粒子の分離と検出
- 光やX線の吸収・反射を調べ、表面や界面での分布と構造、さらには反応性を解明
- 新しい界面反応測定法や微粒子泳動分析法の開発
- 電子以外の粒子で作られる人工原子(エキゾチックアトム)などの研究
など、分析化学、無機化学および放射化学の領域にわたる幅広い研究が行われています。さらに全く新しい原子をも視野に入れた、研究もしています。
- 熱力学で液体や固体におけるエネルギーの出入りを精密に測定
- 新しい化学反応が起るかどうかを予測
- 原子、分子の構造や性質、さらには反応性に至るまで調べる
- 時間分解吸収スペクトル法、超高速表面光電子分光法を用いて化学反応を追跡
など分子や原子の物理的挙動や化学反応を物理的に研究します。
また、理学研究科附置の構造熱科学研究センターを中心に、超精密熱測定機器を備え、世界の熱力学研究のメッカとなっています。
- 新しい有機化合物や酵素の発見と構造解析
- 化合物が持つ新しい生理活性の発見
- 化合物が生体中で作用しているメカニズムの解明
などの研究をしています。
また、自然界にはない有機化合物も扱い
- 化合物に新しい性質を与えるための化学構造を経験的・理論的・計算科学的な設計
- 化合物の3次元構造、性質や生理活性を解析
- ひとつずつの分子を画像化しその形状や物性を調べる研究
などの研究もしています。
- 高分子に固有の分子運動を調べる
- 高分子を精密に高分子を設計・合成
- 高分子に独特な反応系の研究
- 高分子の形、大きさ、性質、分子間相互作用を明らかにする研究
などによって、新しい性質をもつ高分子を精製したり、高分子のもつ性質を用いた医薬品などへの応用を研究しています。
約1/3は、高校では物理ではなく生物選択
化学分野では、必ず物理の知識が必要になりますが、阪大の化学科の学生の1/3は高校のときに物理を学習していない人です。
そのような人のために、物理未履修者を対象とした授業を開講しており、補うことができるようなカリキュラムになっています。
「物理を選択していないから」ということで迷っている人には良いかもしれません。
大学院進学率は約88%
化学科の進学率は少し高いですね。
研究内容
研究室は無機化学・物理化学・有機化学合わせて化学専攻(大学院の分類)として設置されています。
それぞれ研究内容を少しだけ具体的にみていきましょう。
- 液液界面反応の磁場による制御
- パルス磁場を用いる磁気光学顕微分析法の開発
- 放射性元素を対象とした錯体合成とその特性の研究
- 希土類単分子磁石などの新しい分子素子の開発と基礎研究
- カルシウム含有メタノール脱水素酵素と、その電子受容タンパク質の構造生物学的研究
など
- 強い電子相関効果に由来した新規量子現象の探索
- 外部環境制御による量子現象の探索
- 有機薄膜の顕微光電子分光の研究
- 原子・分子集合体の構造・電子状態理論構築
- 生命現象の理論的解明
- 時間分解静電気力顕微鏡による電子移動ダイナミクスの研究
- タンパク質の構造揺らぎと機能発現
など
- 開殻的電子構造を有する閉殻分子の単分子及び分子集合体の研究
- ポリ(ピリジル)メタンの合成と物性及び金属錯体に関する研究
- 新規の電気、光物性を持つ有機分子の設計・合成およびそのデバイス化
- 生理活性物質の化学合成と分子機構に関する研究
- 糖鎖、ペプチド合成のための新規反応の開発
- 糖鎖機能と生物進化のなぞにせまる
など
高分子化学は高分子化学専攻として研究室が設置されています。
- 有機金属錯体を用いた新しい重合反応の開発と機能性高分子への応用
- 超分子ポリマーの構造と分子運動の研究
- 高分子複合系の構造と分子運動の研究
- 細菌の蛋白質輸送装置システムの構造と機能の解明
- 水素結合能を有する高分子の研究
- リアルタイム微量化学物質検出技術の開発
- 新規超分子の合成および高感度センシングシステムを開発
- 明確な化学構造を有する精密高分子の創製
- 機能性ポリマーの創製に向けた分子設計と精密合成
など
まとめ
- 阪大の中でも最も歴史ある学科
- HPのQ&Aを見て欲しい
- 高校で物理を履修していなくても大丈夫
- 工学部応用自然科学科や基礎工学部化学応用科学科との違いを調べ、自分のやりたいことと一致する学科を選ぼう
注意事項
このページでは、大学の公式サイトなどの一般に公開されている情報を元に解説しています。作成者は大学関係者ではありませんのでご注意ください。
またここで解説した内容は変更されている可能性があります。最終的には必ずご自身で公式サイト等にて確認してください。