マテリアル工学科についての説明は目次の③からになります。名古屋大や名古屋大学工学部の解説を飛ばしたい方は③から読んでください。
名古屋大学について
まずは名古屋大学について
公式サイトや各種ページ
HPは受験生向けに名古屋大学を紹介するサイト(多分学生が運営している)と学部紹介サイトがあります。
学部紹介ページ
受験生のための学部紹介サイト
研究室ごとに簡単な動画が用意されていて、さらに教授のインタビューまであります。
構成もコンパクトで見やすくすばらしい!
名大ならば、とりあえずこのページで気になる学部学科をチェックしてから、それぞれの学部学科のHPで詳しく調べる手順が良いと思います。
研究室紹介ページ
名古屋大学の特徴
- 理系の雄。
ノーベル賞受賞者の数は日本では東大・京大に次ぐ3番目 - 基礎教育・教養教育を大切にしている
- 理学部・工学部・農学部の他に情報学部がある
- 推薦入試あり。募集人数はばらつきがあり
- キャンパスは地下鉄直結の好立地
それぞれの項目を簡単に解説します。
学問において、歴史と伝統というのは非常に大切です。
名古屋大学では、これまで5人のノーベル賞受賞者を輩出しています。
小林誠氏・益川敏英氏・赤崎勇氏・天野浩氏・下村脩氏です。
これは、日本では東京大学、京都大学に次ぐ3番目の功績です。このように理系の研究機関としてこれまで大きな成果を上げてきた歴史が名古屋大学にはあります。これは非常に大きなことです。
このような歴史が、名古屋大学といえば理系のイメージを造ってきたのだと言えるでしょう。
名古屋大学は、「自由闊達」な学風を伝統とし
- 世界屈指の知的成果を産み出す
- 論理的思考力と想像力に富んだ勇気ある知識人を育てる
ことを目標に掲げています。特に強調されているのは
にしているということです。
少し長くなりますが、大学案内から引用します。
大学に入ったら専門を思いっきり勉強するぞ、という気持ちはとても大切 です。でも、ちょっと待ってください。これが、狭い専門だけを勉強したい、「無駄な」ことは勉強したくない、ということを意味しているとしたら、少し考えを改めてほしいと思います。名古屋大学の教育目標は、みなさんに「勇気ある知識人」になっていただくことです。ここでいう「知識人」って何でしょうか。
知識人であるために必要な第一のことがらは、専門性です。しかし、現代のどの学問分野もたいへんに高度化しています。いきなり最先端の知識を身につけることはできません。学問はすべて先人の成し遂げたことに、少しずつ付け加える形で発展してきました。あなたも、本当の意味での専門性を身につけたいと思うなら、まずは高度な専門を学ぶためのしっかりした基礎的学力を身につける必要があります。確かな基礎的学力の上に、はじめて個性的な専門性が花開くのです。基礎教育のねらいはここにあります。
知識人であるために必要な第二のことがらは、教養です。「教養」という言葉はドイツ語のビルドゥンク(Bildung)に由来します。英語で言うとビルディングですね。「建てること・つくりあげること」です。何をつくりあげるのでしょうか。それは「社会の責任ある担い手(市民)としての自分」です。こうした市民としての自己形成には、人類にとって価値あるものは何か、世界の中で自分は どのような位置づけを占めているのか、われわれはどのような道のりを歩んできて、いまどこに向かっているのか…といったことをできる限り大きな座 標系に照らして見極める能力が必要です。
現代は専門化の時代だといわれています。難しいことがらを専門家に任せることで、科学・技術の発展と経済成長が達成されてきました。しかし、専門知識はときとして暴走しがちです。専門化して高度化した科学技術や社会の仕組みは、歯止めがきかなくなると、逆に人々に大きな災厄をもたらします。核兵器や環境破壊、さまざまな社会問題を考えてみれば分かるでしょう。つまり、専門性は、幅広い教養によって方向づけられる必要があるのです。教養教育のねらいは、きちんと社会を構想し専門性をその社会にうまく位置づけていくことのできる資質を、みなさんに身につけてもらうことにあります。
これは入学してくる「元高校生」が持っているマインドに名古屋大学が多少危機感を覚えているのでしょう。世界をリードしていくような人材を育てるために教養教育(リベラルアーツ)が必要だという考えには、私も大いに賛成するところです。
ほとんどの大学では、工学部などに情報学科が設置されていますが、名古屋大学では「情報学部」として独立した学部をつくっています。
IT分野はこれからの社会で重要な分野になることは明白ですから、理系に力を入れている大学として他大学にはない取り組みで道を開いていくことを考えたのでしょう。
ちなみに、薬学部はありません。名古屋市立大学にあるからでしょう。歯学部もありませんね。
医学部以外は東山キャンパスになります。
東山キャンパスは地下鉄「名古屋大学駅」直結なので、非常に好立地ですね。名古屋駅までも地下鉄ですぐです。
大学選びでは、偏差値以外にも重要視したい点がいくつかあります。受験生は偏差値と地域(家の近場)だけの情報で選びがちですが、大学に入学してから重要な点に気づくことも多いです。
大学選びの時点から、それらを考慮して選びたいですね。以下の記事で解説しています。
【大学選びで重要視すべき4つのポイント】
Schrödinger正直、大学って偏差値以外何をみて選んだら良いかわかんないよね 室長いちばん大切なのはそこの大学に入って何が学べるか、だね Schrödingerも[…]
名古屋大学の学部構成(各リンク)
名古屋大学工学部について
次は工学部について見ていきましょう。
学部紹介の動画も作られています。
名古屋大学工学部の特徴
- 設立当初より設置されている学部
- 高校生向けイベントも開催
- 地元愛知出身者が約半数
- 大学院進学率は約8割
学科の歴史と伝統の重要性は別の記事で書いています。是非参考にしてください。
【偏差値より大切!?】大学選びで重要視すべき4つのポイント
Schrödinger正直、大学って偏差値以外何をみて選んだら良いかわかんないよね 室長いちばん大切なのはそこの大学に入って何が学べるか、だね Schrödingerも[…]
他の帝国大学では、理学部が設置されているところが多く、当初から工学部が設置されているというのはめずらしいです。
名古屋大学の工学部の「強さ」がうかがえます。工学部からノーベル賞受賞者輩出していることからも同様です。
学科構成(リンク)
()は募集人数です。
他大学との比較
他大学の工学部と募集人数を比較してみましょう。同じ偏差値群Aと比較してみます。
偏差値群って何?という人はこちらの記事を参照してください。
【大学の偏差値群】
偏差値群から考える 細かな偏差値の差にこだわるのは無意味です。が、あまりに自分の偏差値とかけ離れた大学に進学することもオススメできません。 これは「大学の選び方」の記事で書いた通りです。まだ読んでない方はそちらから読んでみ[…]
【偏差値Aの工学部】
名古屋大学 工学部 | 7学科 | 614人 |
北海道大学 工学部 | 4学科 | 670人 |
東北大学 工学部 | 5学科 | 810人 |
大阪大学 工学部 | 5学科 | 820人 |
九州大学 工学部 | 6学科 | 778人 |
東京工業大学 | 5学科 | 314人 |
大阪大学が一番募集人数が多いですね。
大阪大学の工学部を考えている人は、合わせて基礎工学部の方も調べてみましょう。
(参考)大阪大学は理学と工学の中間的存在の「基礎工学部」を設置。東京工業大学は理学と工学の中間的存在の「理工学院」を設置しています。そのため工学部の人数だけではかれない部分もあります。
名古屋大学工学部の入試について
- 募集定員の約10%〜25%程度が「推薦」で募集される。
- 後期日程はなし
- 倍率は2倍〜3倍とやや低め
工学部の出願資格
特別な要件等はありません。各学校から最大2名の枠が設けられているので、名古屋大学を志望するような生徒が毎年多くいる学校であればそのあたりが引っかかってくるかもしれません。
出願要件では有りませんが、任意で求める書類というものが設定されています。
- 英語検定試験(TOEFL・IELTS・TOEIC・GTEC・英検等)の成績を証明する書類
- 国際バカロレアのスコアを証明する書類
- スーパーグローバルハイスクール(SGH)・スーパーサイエンスハイスクール(SSH)・グロー バルサイエンスキャンパス(GSC)における活動状況を証明する書類
- 数学オリンピック・科学オリンピックへの参加状況を証明する書類
- 全国規模・地方規模の科学分野のコンテスト等への参加状況を証明する書類
- その他,各種活動状況,表彰,資格を証明する書類
書類審査+大学入学共通テスト
二次選抜
口頭試問100点
(環境土木・建築学科建築学プログラムでは,スケッチを実施)
詳しくは、今年度の募集要項にて確認してください。特に募集定員は年度ごとに変更されているようです。
マテリアル工学科について
- 「材料工学」と「化学工学」を融合した学科
- すべての産業を支えるマテリアル工学
- マテリアル工学を先導する最先端実験施設を保有
- 大学院進学率はおよそ90%程度。
- 研究は大きく5つの分野に分かれる
- 量子物理工学講座
- 構造物性物理学講座
- 複合系物性工学講座
- 物質デバイス機能創成学講座
- ナノ解析物質設計学講座
「材料工学」と「化学工学」を融合した学科
「何をつくるか(デザイン)」「どのようにつくるか(プロセス)」「いかにして社会に送り出すか(システム)」を考え、研究するのが「マテリアル工学科」です。
これまでの「材料工学分野」と「化学工学分野」を融合させることで、原料から社会実装までの一貫かつ調和した実効的な「ものづくり」を革新していきます。
工学部の特徴として、「製品への応用の研究をする」というところはみなさんが良く知っていることだと思うのですが、実は「どのようにつくるか(プロセス)」と「いかにして社会に送り出すか(システム)」も合わせて研究するというのも大きな特徴です。
ものすごく良い製品ができそうだけど、どこの企業でも作れそうにないとかでは意味がありません。プロセスとシステムがとても重要なのです。
工学を象徴して「ものづくり」と呼ぶ場合が多いですが、この「ものづくり」というワードには「何を作るか・どんなものを作るか」だけではなく、このプロセス・システムを含んだ言葉になっているのです。
マテリアル工学科では、これら3つの要素に立脚した研究を行っているということですね。
発展した現在の科学では新しい材料・より高性能な材料を開発・研究しようと思うと、化学的なアプローチは避けては通れません。単純な材料を扱っていた時代はどちらかというと物理的なアプローチをとっていたかもしれませんが、現在は化学です。
そのイメージを変えるためにも材料工学からマテリアル工学に名称変更が行われたのだと考えられます。
すべての産業を支えるマテリアル工学
材料工学分野と化学工学分野が融合したことにより、機械、自動車、重工業、電気・電子機器、情報、医療、食品、資源、エネルギーなど、その将来性が飛躍的に広がりました。工学を俯瞰できる多様性を身につけること、これは将来への可能性を大きく広げます。
当たり前ですが、素材を使わないものづくりは有りえません。そのような意味でも一番守備範囲が広いのがこのマテリアル工学科でしょう。
マテリアル工学科では、機械・自動車・重工業といったイメージしやすい材料・素材だけでなく、太陽光発電や電池などのエネルギー関係の素材やIT機器などの電子機器の性能を向上させるようなナノ素材まで研究しています。どの分野にも応用可能なのがマテリアル工学科の特徴でしょう。
マテリアル工学を先導する最先端実験施設を保有
名古屋大学シンクロトロン光研究センターを保有しています。
- 半導体集積回路やマイクロマシンの部品製造に活躍しているX線リソグラフィー
- 放射光照射による新物質の開発
- 蛋白質や生体などの複雑な有機物質のX線回折やX線顕微鏡による構造解析
- 感度の著しく高い蛍光X線分析装置の開発
- 光電子分光や軟X線分光による電子構造や原子分子の結合状態の研究
- XAFSによる原子レベルの構造解析
などが可能であり、高性能な実験所を自前で持っているのは何事にも代えがたいメリットでしょう。
大学院進学率は約90%
研究内容
上でも紹介した、便利な「研究室リスト」のページでも一覧で見ることが出来ますが、マテリアル工学科のHPは他の工学部の学科よりも充実しているので、HPにも研究室一覧のページが用意されています。
こちらの方は、研究内容も一覧で書かれているので非常にわかりやすいです。こちらの方をみてもらうのが良いでしょう。
マテリアル工学科は3つの専攻に分かれています。
- 材料デザイン工学専攻
- 物質プロセス工学専攻
- 化学システム工学専攻
です。それぞれ具体的な研究内容をみていきましょう。
- データサイエンスを活用した次世代材料設計解析法の構築
- 3次元材料組織情報を活用した新材料設計法の開発
- ナノ層状構造材料の塑性変形機構の解明と力学特性の制御
- 人工知能を取り入れた材料学の基盤構築
- 最先端鉄鋼材料の開発
- 電子顕微鏡によるナノ構造解析
- 材料分析・評価に利用するための強力な電磁波の発生・利用方法の研究
- 自動車排ガス浄化/大気環境浄化のための触媒設計
- 実用レベルで作動する全固体蓄電池の構築手法に関する研究
- ナノ材料の原子レベル構造解析
など
- 超臨界・亜臨界流体による天然物からの生理活性物質の抽出ならびに微粒子化
- 複合技術による蓄熱材料の高性能化
- 金属3Dプリンターで造形された軽金属材料の特性評価
- 不確定性を含む動的システムの計画・運用
- ナノ構造を利用した次世代太陽電池
- 歪み・結晶欠陥制御による材料の高機能化
- 磁性材料を基軸とする高効率エネルギー材料の創成
- 次世代磁気記録材料やスピントロニクスデバイスに資する機能性材料の創成
など
- 炭素資源の高効率熱化学転換プロセス開発
- 省エネルギーCO2分離回収プロセス開発
- 機能性磁性ナノ粒子を用いた再生医療技術の開発
- LiOH/LiOH・H2O系化学反応を用いた低温熱エネルギーの高密度貯蔵
- 触媒科学、反応工学を駆使した新しい物質変換プロセスの開発
- 化学反応、熱移動、物質移動を伴う熱デバイスの開発
- 廃棄物の有価金属の回収
- 燃料電池、二次電池のための電池触媒系材料創成と反応制御
- 革新的な電気化学デバイスに向けた電解質膜・電極材料の研究
- 材料開発に有用な新しい人工知能に関する研究
など
まとめ
- 地下鉄直結。旧帝大の中でも好立地
- 名大の中でも最も歴史ある学部
- 受験生のための学部紹介ページが超便利
- 素材開発。自動車などの機械だけでなく、医療・エネルギー・ナノデバイスなどあらゆる産業に応用可能。
- 素材開発に欠かせない実験所「シンクロトロン光研究センター」を自前で保有。
注意事項
このページでは、大学の公式サイトなどの一般に公開されている情報を元に解説しています。作成者は大学関係者ではありませんのでご注意ください。
またここで解説した内容は変更されている可能性があります。最終的には必ずご自身で公式サイト等にて確認してください。