生物資源環境学科についての説明は目次の③からになります。九州大や九州大学農学部の解説を飛ばしたい方は③から読んでください。
九州大学について
まずは九州大学について
公式サイトや各種ページなど
研究内容を紹介するページが用意されています。
先生紹介サイト「先生の森」
九州大学の特徴
- 第4番目の帝国大学として創立。医学部・工学部からスタート
- 大学改革に着手。新しい試み多数あり。変革の真っ最中
- 高校までの勉強から大学での学びに移行するため「基幹教育」に力を入れている
- 理学部・工学部・農学部の他に芸術工学部がある
- 2018年に新たに「共創学部」設立
- 理学部・農学部・芸術工学部では推薦入試あり
- 2018年に新キャンパス完成
九州大学は2011年に創立100周年を迎えました。それを期に近年大きく大学の改革を勧めています。学部再編・キャンパス移転・新入試などなど、旧帝国大学ではどちらかというと伝統を守るような取り組みをしているところが多いですが、この九州大学では、一気に変革を推し進めているようです。
時代の変化に対応していける大学を目指しているのでしょう
例えば「学際コース」として所属する学科とは別の学科の授業を履修する「チャレンジ21」という制度などがあります。
そういった雰囲気の方が好きな人にはおすすめの大学かもしれません。
九州大学は「基幹教育」というものに力を入れています。
「基幹教育」は1年次のまだ専門科目ではなく、共通科目を履修している間に行われる教育で「学び方を学ぶ」ことです。九州大学が掲げているのは「ものの見方・考え方・学び方」です。
新たな知や技能を創出し、未知なる問題をも解決していくための幹となる、「ものの見方・考え方・学び方」を学ぶのが九州大学の基幹教育です。
高校までの「受動的な学び」ではなく、自ら知を求めていくような「アクティブ・ラーナー」になってほしいとの願いがあります。
アクティブ・ラーナーとは、「学び続けることを幹に持つ、未知な問題や状況にも果敢に挑戦するスピリットと行動力を備えた人」のことです。
アクティブ・ラーナーは、予測できない未経験の状況を前にしても、既成の枠組みや考え方を超えて適切に問題を分析します。そして、課題を発見・解決する、研ぎ澄まされた感性と柔軟な洞察力を発揮するのです。
専門領域に閉じることなく、「考え方・価値観」の異なる人々との知的交流や、「他者や状況に開かれた」発想対話型の学び、蹟きや失敗から学ぶ過程を重視した教育が求められます。
九州大学の理系学部には一般的な理学部・工学部・農学部の他に芸術工学部があります。芸術工学部は、前身は九州芸術工科大学で、2003年に九州大学と統合されました。
「芸術工学=工業デザイン」のことで、工業デザインに特化したコースは全国でも珍しく、人気のある学科となっています。
大学改革の一つで、2018年に新たな学部、「共創学部」が設立されました。
医歯薬系や芸術工学部以外は新キャンパスの伊都キャンパスになります。
新しい充実した施設のある新キャンパスで学べるのは一つの大きなメリットですね。
ただ、立地はあまり良くありません。最寄りの駅からバスで移動することになります。
【大学選びで重要視すべき4つのポイント】
Schrödinger正直、大学って偏差値以外何をみて選んだら良いかわかんないよね 室長いちばん大切なのはそこの大学に入って何が学べるか、だね Schrödingerも[…]
九州大学の学部構成(各リンク)
九州大学農学部について
次は農学部について見ていきましょう。公式HPはこちらから。
九州大学農学部の特徴
- 100周年を迎えた歴史と伝統ある学部
- 1学科4コース制。生物系、化学系、数物系、社会科学系と多様な学び
- 研究の柱は「新農学生命科学」「環境科学」「国際アグリフード システム科学」「食科学」
- 農学部全体の進学率は約70%
【九州大学農学部長の挨拶】
では、特徴をそれぞれ見ていきましょう。
Schrödinger正直、大学って偏差値以外何をみて選んだら良いかわかんないよね 室長いちばん大切なのはそこの大学に入って何が学べるか、だね Schrödingerも[…]
- 生物資源生産科学コース
- 応用生物科学コース
- 地球森林科学コース
- 動物生産科学コース
の4コースが用意されています。コースには2年の後期から分かれます。
自分がどの分野の研究をしたいのか、考える時間が1.5年用意されているわけですね。それがメリットと言えます。
しかし
各コースには定員が定められてい ますので,学習成績順位によっては希望しないコースに配属されることもあります。
希望のコースに行けるとは限らないのでそこはデメリットにもなります。
アグリフードシステムとは、農産物および食料の生産・流通・消費の全体系を表している。
他大学との比較
他大学の農学部と募集人数を比較してみましょう。同じ偏差値群Aと比較してみます。
偏差値群って何?という人はこちらの記事を参照してください。
【大学の偏差値群】
偏差値群から考える 細かな偏差値の差にこだわるのは無意味です。が、あまりに自分の偏差値とかけ離れた大学に進学することもオススメできません。 これは「大学の選び方」の記事で書いた通りです。まだ読んでない方はそちらから読んでみ[…]
【偏差値Aの農学部】
東北大学 農学部 | 2学科 | 150人 |
北海道大学 農学部 | 7学科 | 216人 |
名古屋大学 農学部 | 3学科 | 136人 |
大阪大学 | なし | なし |
九州大学 農学部 | 1学科 | 226人 |
東京工業大学 | なし | なし |
(参考) 神戸大学 農学部 | 3学科 | 160人 |
意外なのですが、九州大学が最多ですね。九州大学は他の理系学科も募集定員が多く、理系が大きい大学だからですね。
九州大学は1学科で入学後にコースを選ぶことができるのも一つの特徴です。
大学内で他の学科と比較して人数が多いのは北海道大学です。ぜひこれらの大学も比較してみましょう。
九州大学農学部の入試について
- 推薦入試の募集定員は全体の約10%が「推薦」で募集される
推薦の定員数は他の学部と比較して少ない
- 一般入試の後期日程も少人数であり
推薦入試について
農学部の推薦入試の出願資格や試験内容
各学科の推薦入試の内容を一覧にしておきます。詳しくは募集要項で必ず調べましょう。
書類選考
二次審査
小論文,面接及び令和3年度大学 入学共通テストの成績の総合評価
生物資源環境学科について
農学部には生物資源環境学科の1学科しかありませんので、学科HPというものはありません。農学部のHPがそれにあたります。
学科の特長も農学部の特徴と同じになるので、ここではコース別の内容を紹介していきます。
- 生物資源生産科学コース
- 応用生物科学コース
- 地球森林科学コース
- 動物生産科学コース
コースは2年後期に選択します。
それぞれのおおまかな研究テーマは以下のようになっています。
コースと研究分野の一覧のページはこちら。
次にそれぞれのコースについて解説します。
生物資源生産科学コース
生物資源生産科学コースは大きく5分野です。
- 農学分野
- 植物育種学
- 作物学
- 園芸学
- 植物生産生理学
- 植物病理学
- 昆虫学
- 昆虫ゲノム科学
- 生物生産環境工学分野
- 灌漑利水学
- 水環境学
- 土環境学
- 土壌学
- 気象環境学
- 生物生産システム工学分野
- 農業生産システム設計学
- 農産食料流通工学
- 農政経済学分野
- 食料農業政策学
- 農業経営学
- 食料経済分析学
- 食料流通学
- 環境生命経済学
それぞれの研究内容を見ていきましょう。
- イネの遺伝子マッピングとクローニング
- イネの各種形質の遺伝・育種学的研究
イネの高温による子実の品質低下の抑制
- ダイズ・トウゴマの脂質含量の向上
スパラガスにおける多胚種子出現メカニズムの解明と遺伝・育種学的活用
イネにおける光合成の窒素応答を制御する転写因子の解明
植物病原性細菌における多様性解析
生物多様性保全の基礎となる研究
など
- シートパイプを用いた水管理技術の開発
- 東南アジア流域における物質・水循環調査
- 河川底泥および農地の重金属汚染に関する研究
- 作物の光合成・転流の評価とモデル化
- 作物の耐凍性の獲得・消長メカニズムの解明
など
- 野菜の品質変化シミュレーション
- 物理的手法による農産物の表面殺菌技術の確立に関する研究
- 生鮮農産物・食品表面に発生するバイオフィルムの発達予測とその制御に関する研究
- 籾の揺動選別現象の解明
- トラクターの力学モデルと転倒安全性向上に関する研究
- IoTを用いた環境計測・制御システムの開発に関する研究
など
応用生物科学コース
2分野あります。
- 応用生命科学
- 植物栄養学
- 土壌環境微生物学
- 発酵化学
- 生物化学
- 農業薬剤化学
- 合成生物学
- 生物物理化学
- 遺伝子制御学
- バイオプロセスデザイン
- 食糧化学工学
- 栄養化学
- 食糧化学
- 食品分析学
- 食品衛生化学
- 食品製造工学
- 微生物工学
- 細胞制御工学
- 微生物遺伝子資源学
- 生物機能デザイン
それどれ見ていきましょう。
- タンパク質への植物特異的な糖鎖付加機構
- 微生物群集構造解析による環境評価
- 微生物農業による土壌保全と活性化
- 酵母の細胞内小胞輸送経路の解析とその応用
- DNA複製、修復、組換え、転写、翻訳の研究
- 人工遺伝子回の構築と応用
- 人工複合微生物系の構築
- 大規模代謝反応システムにおける動的感度解析法の開発とその応用
- 遺伝子間の関係、遺伝子制御ネットワークを解明
- 「X線結晶構造解析」による立体構造解析
など
- 脂質代謝に及ぼす外因性および内因性酸化コレステロールの影響
- 肥満に及ぼす食品成分の影響
- 食品成分の機能性に関する分子的基盤の確立と食による疾病予防
- 食品成分の機能性評価
- 食品添加物による細菌の付着およびバイオフィルム形成阻害
- 水蒸気による瞬間湿熱殺菌法の開発に関する研究
- アジア人の腸内微生物叢およびその代謝物の解析
- 老化・寿命制御の分子機構の解明とアンチエイジング創薬への応用
- 発達期タンパク質・アミノ酸栄養による脳高次機能制御
など
地球森林科学コース
分野は3つあります。
- 森林機能制御学
- 森林計画学
- 森林保全学
- 森林政策学
- 森林機能開発学
- 造林学
- 植物代謝制御学
- 木質資源理学
- 森林化学
- 生物材料機能学
- 生物資源化学
- 木質材料工学
- 高分子材料学
- バイオマテリアルデザイン
それぞれ見ていきましょう。
- 針葉樹人工林および常緑広葉樹二次林における育林プロセス・経営システムに関する研究
- アジアにおける持続可能な森林経営に関する研究
- 山地から海岸に至る土砂の移動現象を明らかにし、災害の予測方法の確立
- 森林所有者の動向と山村の暮らしの調査研究
- 水・物質・エネルギーの循環,特に蒸発散の研究
- 森林生態系の構造,多様性,機能の関係についての研究
など
- LOHASを志向した森林生物資源の新規生理活性機能解明とその応用
- 森林生物資源を活用した機能性表示食品の開発
- 樹木の幹材および根材の形成機構の解明
- 木材の流体透過性と木材内への防腐薬剤の定着性の研究
など
- 糖鎖合成から分子配列まで人為的な構造制御を施したバイオマテリアルの開発
- 構造体触媒の開発
- 木質資源材料の生産技術と機能の開発
- 多糖類溶液から機能材料の創製
- 繊維ネットワークの構造とレオロジー特性の研究
- バイオナノファイバーの創製と機能化
など
動物生産科学コース
2つの分野があります。
- 水産科学
- 海洋生物学
- 水産増殖学
- 水族生化学
- 海洋資源化学
- 水産生物環境学
- アクアフィールド科学(水産実験所)
- アニマルサイエンス
- 家畜生体機構学
- 家畜繁殖生理学
- 動物学
- 畜産化学
- 代謝・行動制御学
それぞれ見ていきましょう。
- 「魚類の性と生殖」を生理および生態の両側面から解明
- 新たな水産増養殖技術の研究開発
- 魚類の補体系が関与する生体防御機能の解明
- 各種血液細胞による免疫機能の解明
- 形質転換系、遺伝子破壊系の構築に関する研究
- 糖脂質合成系と分解系に関する研究
- 化学物質とマイクロプラスチックの複合毒性に関する研究
- 赤潮藻類の生態・毒性の研究
- 境汚染モニタリング
- 河川構造物(ダムなど)と魚類の生息場との関係性に関する研究
など
- 動物の味覚受容機構の解明
- 家畜・家禽の腺性下垂体に関する研究
- 精子の形態形成とエピジェネティクス制御に関する研究
- 精子の分子構造に関する研究
- 超高圧処理による食肉加工の研究
- 筋肥大・再生のメカノバイオロジー
- 季節性感情障害(冬季うつ病)のメカニズム解明
- 栄養や運動による季節性感情障害の改善
など
まとめ
- 旧帝大ではめずらしい「大学改革」を推進中。時代の流れを察知して新しいことにチャレンジしたい人向け
- 2017年に新キャンパス移行
- 1学科4コース。コース分けは2年の後期。大学に入学してから分野を選ぶ時間がある。
- 生命科学・環境科学・食物科学分野。特に食物関係に力が入っている。
- 農学部の人数は他大学と比べても多い。
注意事項
このページでは、大学の公式サイトなどの一般に公開されている情報を元に解説しています。作成者は大学関係者ではありませんのでご注意ください。
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